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もはや「知る人ぞ知る」ではなくなった、現代日本の良心、縄文杉が静かに深く息づく、屋久島で生をまっとうした故山尾三省さんの本がたくさん入荷しました。
伝説の60年代「部族」ムーブメントを経て、屋久島に移住し、その生涯を水と緑の島からのメッセージの発信に捧げた詩人であり哲学者、山尾三省。ブッダの教えへの深い帰依に根ざした詩人が、静かな島の暮らしで見つめ続けた「いのち」。情報があふれ、ものすごいスピードで流れる現代の中で、ふと立ち止まり、人として、「いのち」としての生き方を見つめなおすヒントがあるかも。
2000年の秋、東京は湯島聖堂で行われたイベントでのこと。し〜んと静まりかえった会場で三省さんが「火を焚きなさい」という詩を朗読しました。
「子供たちよ、火を焚きなさい」
と彼が一行読んだとたん、真剣なまなざしで最前列に座っていた子供たちが一斉に、
「はい!」
と返事をしました。会場はどっと湧きましたが、子供たちにとって、三省さんのくもりのない、ストレートなことばが、子供たちの内に眠る、何万年も火を焚いてきた人間の太古のスピリットに響いたのかもしれません。
まずは一冊、読書コーナーで。

(本文より)
<火を焚きなさい>
山に夕闇がせまる
子供達よ
ほら もう夜が背中まできている
火を焚きなさい
お前達の心残りの遊びをやめて
大昔の心にかえり
火を焚きなさい
風呂場には 十分な薪が用意してある
よく乾いたもの 少しは湿り気のあるもの
太いもの 細いもの
よく選んで 上手に火を焚きなさい
少しくらい煙たくって仕方ない
がまんして しっかり火を燃やしなさい
やがて調子が出てくると
ほら お前達の今の心のようなオレンジ色の炎が
いっしんに燃え立つだろう
そうしたら じっとその火を見詰めなさい
いつのまにかー
背後から 夜がお前をすっぽりつつんでいる
夜がすっぽりとお前をつつんだ時こそ
不思議の時
火が 永遠の物語を始める時なのだ
それは
眠る前に母さんが読んでくれた本の中の物語じゃなく
父さんの自慢話のようじゃなく
テレビで見れるものでもない
お前達自身が お前達自身の裸の眼と耳と心で聴く
お前達自身の 不思議の物語なのだよ
注意深く ていねいに
火を焚きなさい
火がいっしんに燃え立つように
けれどもあまりぼうぼう燃えないように
静かな気持ちで 火を焚きなさい
人間は
火を焚く動物だった
だから 火を焚くことができれば それでもう人間なんだ
火を焚きなさい
人間の原初の火を焚きなさい
やがてお前達が大きくなって 虚栄の市へと出かけて行き
必要なものと 必要でないものの見分けがつかなくなり
自分の価値を見失ってしまった時
きっとお前達は 思い出すだろう
すっぽりと夜につつまれて
オレンジ色の神秘の炎を見詰めた日々のことを
山に夕闇がせまる
子供達よ
もう夜が背中まできている
この日はもう十分に遊んだ
遊びをやめて お前達の火にとりかかりなさい
小屋には薪が十分に用意してある
火を焚きなさい
よく乾いたもの 少し湿り気のあるもの
太いもの 細いもの
よく選んで 上手に組み立て
火を焚きなさい
火がいっしんに燃え立つようになったら
そのオレンジ色の炎の奥の
金色の神殿から聴こえてくる
お前達自身の 昔と今と未来の不思議の物語に 耳を傾けなさい
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<原郷の道>
すべての道は 原郷への道である
なぜなら
すべての道は 私自身の自己へ至る道であるほかなく
あなた自身の自己へ至る道であるほかは ないからである
私たちの道は 私たちの原郷への道である
原郷への道は
原郷の道にほかならない